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12.232022
どうするべき? 「パワーハラスメント防止措置」は事業者の義務
話し手紹介
有限会社ノーティス 代表 武井遼(たけいりょう)
「労働施策推進法」に基づき、事業主には「パワーハラスメント防止措置」が義務付けられています。2022年4月より中小企業においても義務化されました(それ以前は努力義務)。
ノーティスはEAP(従業員支援プログラム)を提供する会社です。職場のメンタルヘルスの対策を支援しています。企業の「パワーハラスメント防止措置」対応についても、お手伝いしています。
「パワーハラスメント防止措置」で求められる取り組みのひとつに、「相談窓口の設置」というものもあります。こちらについて、私なりの観点から解説してみます。
相談窓口は、どこにお願いするのがいい?
「相談窓口の設置」というのは、おもにハラスメントに悩む従業員が利用します。会社にはなかなか相談しづらいこともあり、第三者を相談先とします。
現状では、弁護士や社会保険労務士を外部相談窓口としているケースが多いと思われます。ハラスメントの相談があれば、法的な観点から問題に取り組んで解決へと導きます。法律の専門家ですから、やはり頼りになります。
選択肢のひとつとして、産業保健の専門家も検討してみてください。
ハラスメントの問題にはいろいろな要素が絡み合っています。原因は職場環境にあるかもしれません。また、ハラスメントを行う人、受ける人にも、それぞれに問題を抱えていることも多いでしょう。当事者に発達障害やコミュニケーション障害があったり、激しいストレスからPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症している場合もあります。対応には臨床心理学的なアプローチ、医学的なアプローチも必要になってくるのです。
産業保健を提供する事業者はいろいろ。選ぶ際には、コンサルタント・産業医派遣・心理カウンセリングなど総合的にサービスを提供している事業者がオススメです。
ちなみにノーティスは、産業保健を総合的に支援しています。当社の事業は、もともとは医療機関内で始まりました。鹿児島市にある武井内科クリニック(内科・心療内科・アレルギー科)内の心理カウンセリング事業が法人化したものです。臨床心理士・公認心理師・医師と連携をとりながら、質の高いサービスの提供を目指しています。
当社が運営する「カウンセリングルーム ユーカリ」は個人カウンセリングやグループカウンセリングに対応。復職支援プログラムも実施しています。独立行政法人労働者健康福祉機構の登録相談機関の認定も受けています。
相談窓口の利用の流れは?
「外部相談窓口をどう運用していくのか、なかなかイメージがわかない」と言われることもあります。というわけで、ノーティスでの利用の流れを紹介します。実施の一例として、参考にしてみてください。
- 相談希望者(ハラスメントに悩んでいる従業員など)が、企業内の担当者に相談窓口の利用を申し込みます。担当者からノーティスに連絡があり、利用日時を決めます。費用は事業者が負担。
- 臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングを行います。カウンセリングルームに来ていただく場合もありますし、担当者を職場に派遣することも可能です。
- 問題解決のために必要な対応をカウンセラーから提案します。当事者どうしの関係修復、職場環境の改善、配置換え、法的対応など、企業側で検討していただきます。相談者が心身に不調をきたしている場合は、治療に向けた対応もお願いしています。医療機関や医師も紹介します。
相談したことで「職場での立場が悪くなりはしないか」とか、「相手からの嫌がらせがもっとひどくならないか」とか、そんな心配をされる方もいらっしゃいます。そうはならないように、十分に配慮してカウンセラーは情報を扱います。相談内容は秘密厳守です。本人の同意のない情報を他人に伝えることはありません。
「ハラスメントをしているかも」という相談も
じつは、「自分にパワハラ行為があるんじゃないか」「自分の態度がパワハラだと思われていないだろうか」といった相談も少なくありません。
「部下の態度がおかしい」「人間関係がうまくいかない」というところからや、「感情的になって、きつい言葉を発してしまった」という後悔からの相談もあります。「訴えれたりはしないだろうか」と不安を持っている方もいらっしゃいます。
カウンセリングでは、じっくりと話を聞いてアドバイスします。また、相談内容がハラスメントに該当する場合は、対策を一緒に考えます。
こういった相談は、ハラスメントの予防や早期発見・早期対応にもつながります。
設けなかったら罰則はある?
罰則は定められていません。だからといって、対応を怠ってはいけません。
まず、ハラスメントに関する深刻な問題が発生すると、企業にとっては大きな損失です。生産性の低下や従業員のモチベーションの低下をはじめ、その影響は業績悪化にもつながります。
また、企業イメージの悪化にも。近年は情報が一気に広がります。報道で取り上げられることも多く、SNSでも情報が拡散されてしまいます。
そして、問題があった企業が十分な対策をしていなかったとなると、さらに激しく追求されることに。企業の安全配慮義務を問われる可能性もあります。
「パワーハラスメント防止措置」への対応は、国で決められた義務です。でも、それを理由にやるものではない、と私は思います。「従業員を守るため」というイメージを持っている人も多いと思います。同時に「事業者の利益につながる」ことでもあるのです。
どう対応していくかを、しっかりと考えましょう!